ドル円は現在(18:00)150.78円、年初来高値150.88円(2/13)は目の前だ。これまで日本政府のドル売り介入懸念からドル買いを進めることに慎重だった市場が、覆ってきた。今の世界の経済環境が、介入があっても政府自らがファンダメンタルズに逆らうことになるとの認識が広がってきたと、変化してきたのではないだろうか。その意味で、真のポジション・テイカーは「今は介入を待っている」、その時こそ安くなるドルを買う時だと、戦略転換しているとの思いが強くなってきた。
さて、お金は高い所に流れる、が筆者の基本的な考え方である。高い所とは、信用・成長・金利であるが、現在の日本に限って言えば、いずれも日本は全然高くない。GDPがドイツに抜かれ世界4番目になり、次はインドにも抜かれるとの報道があったばかりである。過去20年以上デフレ経済で成長がほとんどない。為替市場は将来を先取りする市場と言われ、円買いは、日銀の緩和政策の終了でマイナス金利の解消から金利のある政策に転換する見通しにより作り出されてきた。筆者もその考え方で、年初の予想でも米国が利下げ、日本が利上げと日米金利差が縮小を続けることになり、2024年末は130円台の可能性があると予想していた。
今年こそ日本も成長を始めると思っているが、先月末IMFから発表された成長率見通しでは、それが覆されている。米国が+2.1%(2024年)、+1.7%(2025年)に対し、日本は+0.9%、+0.8%と低いまま。一方インドは、両年とも+6.5%の成長が見込まれている。日本のGDPがドイツに抜かれ世界4番目になったことも発表になった。円安になってドル換算が低下したことが主な理由との説明があるが、為替相場も含めてこれが日本の実力である。円買いは資産運用の観点から適当ではないと、烙印を押されたと同じである。
加えて、米国から届いたリセッション懸念の消滅には驚いた。景気見通しの正確さで定評のある米大手調査機関のコンファレンスボード(CB)が先週1月景気先行指標を発表したが、指標が好転したとしてリセッション・シグナルが消滅と宣言した。総合指数は22カ月連続して下落しているが、10個の構成項目のうち6個がプラス圏に浮上、2024年のGDPは第2-3四半期にはゼロ成長になるが、マイナスにはならないとの見解であった。10個の内訳のうち、主要な項目で新規注文や住宅関係などが好転していた。
そして本日からサンパウロで開催されるG20財務省・中央銀行総裁会議の声明草案が明らかになり、世界経済のソフトランディングの可能性は高まった、との案が出てきていると言う。とすれば、米国の優位は継続、FRBの利下げも後ズレになる可能性が高くなる。これが世界経済の主流であり、ファンダメンタルズ的に日本の低下は免れないことになる。まさにノルムが変わった、円は売られる方向に傾いてきた。
筆者は株式の専門家ではないが、インターマーケットの重要な柱であり、常に動向はフォローしている。1989年のバブル下の高値を越えても、天井感が見えない。小刻みながらも毎日史上最高値を更新している。まさに進出領域を一歩ずつ拡大している。未知の領域に入った時に、為替取引で筆者はよく使っているが、「それまでのレンジの高値を越えた時は、そこが新しいレンジの一番安値。まず買いから入る。」と言っている。今の株式市場が、まさにそのような状態と見ている。毎年年初に4金融市場の主要相場の年間見通しを出しているが、日経平均の年間予想は高値40,000とした。もはや40,000円は壁でなく、通過点がコンセンサスになりつつある。
翻って、ドル円相場を見ると、151.94円を超えると、次の相場は今から34年前1990年に辿り着く。1990年の高値は4月の160.20円だが、その前に6月の155.80円の節目がある。一気に155円になるとは思えないが、株が約34年の往って来いとなっていることを思えば、無視できることではないと気を引き締めている。
さて、今後1週間の相場予想だが、ドル円は149.80-151.50円と下値は堅く、150円台は続くと予想する。ユーロドルは1.0700-1.0900、また対円でも161.50-164.00円と先週と同じと予想。そして英ポンドドルは1.2550-1.2800とポンド高を予想する。
(2024/2/28、 小池正一郎)