来週は今月のハイライト、日米英の中央銀行金融政策決定会合がある。既にカナダが5回連続、欧州中央銀行(ECB)が4回連続の据え置きを決めている。次いで日銀が19日に、そしてFRB/FOMCが20日、英国銀行(BOE)が21日と、3日連続で明らかになる。この中で、FRB・BOEは据え置きが有力視されているが、日銀の動向は世界の注目の的だ。
既にドル円相場に日銀の政策変更を先取りする動きが表れている。先週5日から11日迄の5日間続落は、まさにこの見方が主な要因だ。150.55円(3/5)から146.49円(3/11)まで4.06円、約2.7%の円高となった。この間FRBパウエル議長が、議会証言で今年度の利下げ開始を示唆したことも、少なからずドル安の要因になったと思われるが、日銀審議委員の発言が市場を動かしたことは明らかである。加えて、シカゴ筋と言われる円売りポジションが歴史的に大きく積み上がっていたことで、その巻き戻し(円買い/ドル売り)が円高を加速させたであろうことも容易に想像できる。
日銀植田総裁は以前から「春季賃上げ交渉が大きな判断材料になる」と繰り返し発言していた。今日は春季賃上げ交渉の集中回答日、早速「日本製鉄が14%賃上げ」というニュースが飛び込んできた。今後続々と明らかになるが、この動向は世界中に配信され、為替市場を動かす材料となる。
ここまではある意味、だれでも想像がつく。問題は、変更が実際に行われるかどうか、何がどのように変わるかが焦点だ。既に「マイナス金利の撤廃」「金利の三階層構造(注)を終了し、市中銀行が日銀に預ける当座預金の一元化(0.1%の付利)」「イールドカーブコントロール(長短金利操作)の終了と、量的管理(資産買い入れ金額の調整)重視への変更」など、いろいろなメニューが想定されている。
(注)三層構造とは、2016年に導入した当座預金の付利方式。当座預金を、基礎残高(+0.1%付利)、マクロ加算(金利ゼロ)、政策金利部分(付利は-0.1%)と三階層に分類し、それぞれ付利金利を決定する方式。政策金利部分は当座預金の約5.5%前後。
ところで、ドル円相場は現在(19時)148円。日銀の金融政策変更を織り込んだ動きは、まだ始まったばかり、一旦ポジション調整が為されたのだろう。テクニカル的に見ても、ストキャスティクスやRSIで見ると、ドルは売られすぎの位置にある。また移動平均線でも200日線が146.26円(3/12現在)にあり、ブレイク直前に跳ね返されたこともポイントである。ただ一目均衡表では三役逆転への完全転換に近付いていることもあり、このままドル円が150円に向かっていくとも思えない。FRBの決定までは決め打ちを避けたいところだ。
そこで次はFOMCだが、雇用統計・消費者物価の指標から判断すると、今月は据え置き継続と予想される、ただ今回は、経済見通しとドットチャートが発表になる。今年あと何回利下げし、今年末のFF金利はいくらが適切か、注目度は高い。
そこで、今後1週間の相場予想だが、ドル円は146.50-149.50円とやや広めの予想とする。ユーロドルは1.0800-1.1000とユーロ高に、対円では160.00-163.00円と先週に比べユーロ安に予想する。そして英ポンドドルは1.2600-1.2900とポンド高を予想する。
(2024/3/13、 小池正一郎)