先週は四半期末・期末と動きにくい時期で、案の定小動きに終始した。その中でもドル円の行方に関し、今の筆者の注目点は、ドル売り介入があるか、の一点である。
まずドル円の現況を確認しておきたい。先週(3/25-29)の値幅は94銭と1円足らずで、欧米ではイースター休暇もあり、まさに季節要因による薄商いとなった。しかしその小動きは今週に入っても続いているが、市場に漂っている相場の波はそのまま維持されているとの読んでいる。これで円安は終わらない、次を目指す、という波である。
また既に何度も指摘しているが、今回は3度目の152円超えトライである。1回目は2022年10月に付けた約34年ぶりのドル高値(151.94円)、2回目は昨年11月に付けた151.91円、今回は1回目を上回り、151.97円と約1年半ぶりにその高値を更新、1990年7月以来のドル高円安となった。いずれも152円を意識し、超えそうで超えない神経質な値動きが一歩手前で続いている。
今回のドル高更新の背景が、3月の決定会合で日米相反する政策決定となり、市場の思惑とは逆の結果となったことであった。会合前予想は「日米金利差が縮小しドル安円高が進行する」がコンセンサスと言えるものであったが、実際は金利差が拡大方向に動き、市場の思惑ははずれ、ドルの買い戻しや新たなドル買いポジションを作る動きが出たことである。シカゴ市場の通貨別先物売買残高の推移を見ればその動きが分かる。その結果の新高値であった。
この大きな要因は、米国経済指標が堅調、CPI(消費者物価指数)やPCE(個人消費支出)価格指数で、インフレ沈静化スピードは緩慢、ドル金利が上昇したことである。加えて日銀の決定会合では、政策転換そのものは予想通りであったが、金利面、量的な面(バランスシートの縮小政策等)では市場の期待に届かず、むしろ10年債は利回りが低下、結果日米金利差が拡大する動きとなったことである。この状況で、ドル円の次のターゲットは155円との声が大きくなってきた。欧米の金融機関からは、このまま米国FRBが利下げをしなければ、160円もあり得るとの予想も出てきた。
しかしその前に越えなければならない壁となっているのが152円である。ここに介入の有無が絡んでくる。個人的には、152円超えで介入が入る、との予想だ。一昨年の介入の経験から、鈴木大臣や神田財務官の言い回しに介入開始のヒントが隠れているので、その発言に注視している。3月27日には3者会合が開催され、目に見える形で市場に介入近しとのメッセージも出した。口先介入はその前から行っており、財務省は決してオオカミ少年にはならないはずだ。そのキーワードは「投機的」の解釈である。財務省が自ら相場変動が投機的だと判断すれば、いつでも介入に踏み切ることができる。その舞台は既に整ってきた、と確信に近い気持ちだ。まさに152円超えがこの介入ポイントだと筆者は読んだ。
さて、今後1週間の相場予想だが、週末には米雇用統計がある。市場予想は、非農業部門雇用者数が+20.5万人(前月+27.5万人)と前月より減少するが、大きく落ち込まなければ、ドル売りに転じることにはならないと考えている。なお、失業率は3.8%(前月3.9%)の予想である。そこでドル円は、介入があれば瞬間ドル下落の場面もあると考えて148.20-152.80円と広めに予想する。ユーロドルは先週の読み通りユーロ安が進行、今週も1.0700-1.0900と一段のユーロ安に、対円では161.50-165.00円と予想する。そして英ポンドドルは1.2450-1.2750とポンド安を予想する。
(2024/4/3、 小池正一郎)