先週8日、テレビ東京は関係者の話として「政府と日本銀行が2回にわたって為替介入を行ったことが政府関係者への取材でわかった」と伝えた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)後のあからさまな為替介入の可能性に対して、イエレン米財務長官は繰り返し苦言を呈しており、市場には「追加の介入はやりにくくなった」との見方もある。しかし、神田財務官は相変わらず「24時間365日、対応できる」との見解を示しており、基本的には今後も介入への警戒を怠ってはならないものと心得たい。
むろん、5月3日に一時152円割れの水準まで下押したドル/円が、足元で再び156円台をうかがう動きとなっていることも事実である。大型連休明け後に本邦実需筋の買いが続いていることや、複数の米メディアが「ソニーグループが米パラマウント・グローバルに対し、およそ4兆円規模となる買収を提案している」と伝えたことも一つの買い材料と受け止められている模様。結果、ドル/円は4月高値からの下げの半値戻しとなる156.02円を試す動きとなっており、先週末時点で一目均衡表(日足)の基準線と転換線を上抜けている。
先週7日以降は上向きの21日移動平均線(21日線)をもクリアに上抜けており、仮に156円台にしっかり乗せることとなれば、次に61.8%戻し=157円処を試しに行く可能性もあるものと見ておくことが必要になりそうである。すでに市場の関心は、今週15日に発表される4月の米消費者物価指数(CPI)と米小売売上高の結果に向かっており、少なくともそれまでは当局の介入はなされないと見ることもできるだろう。
なお、このところ発表された米経済指標に弱めのものが少なくないという点も見逃すことはできない。実際、今月3日に発表された4月の米雇用統計の結果は事前の市場予想に比べると弱めの結果であったし、4月の米ISM非製造業景気指数も判断基準の50を下回る弱めの数値で、市場からは「サービス業の減速を示唆する」との声が聞かれていた。内訳の一つである「仕入価格指数」が予想を大幅に上回った点に注目する向きもあるようだが、これは主に地政学リスクの高まりなどを背景としたエネルギー価格の上昇を反映したものであると考えられる。
発表された米外食・食品大手の2024年1〜3月期の決算では、米スターバックスが13四半期ぶりの減収に。前年同期比で若干の増収となった米マクドナルドやコカ・コーラにしても、その結果は総じて米消費減速の兆候を示すものであった。
こうした幾つかの弱めのデータが目の前に並んだことから、ここにきて市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げは「年内2回」との見方が“復活”してきている。ただ、このところFOMCメンバーらによる発言にタカ派寄りの内容が多く見られていることも事実であり、結果、先週末の米10年債利回りは再び4.5%台に乗せる動きを見せている。いずれにしても、今後FRBが2回以上の利上げ実施を決定し、なおかつ日銀が1回以上の追加利上げを行うとの見方が強まりでもしない限り、ドル/円のトレンドが明らかに弱気転換することはないと市場は見ているようである。
一方で、ユーロ/ドルは底堅い推移を続けている。今月3日に発表された3月のユーロ圏失業率は6.5%と、5カ月連続で統計データ公表以来の最低水準に留まり、それだけユーロ圏域内の労働需給はタイトになっている。
そのため、市場の一部からは「確実視される6月開始後の利下げプロセスにおいては慎重に行動することが求められる」との声も聞こえてきている。ユーロ/ドルは目先、200日移動平均線(200日線)を一気に上抜けるほどの強さはないものの、下値は一目均衡表(日足)の転換線に支えられやすい。今週の米CPIの結果がユーロ/ドルに200日線を越えさせるかどうか、大いに興味深いところである。
(05/13 07:00)
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