停滞しているドル円相場もいよいよブレーク間近か!日足でみると、形はまだ不完全だが、収束地点に向かって日足のレンジを縮めている。新たなレンジを作るきっかけにちょうどいいのが、今週のジャクソンホール会議とみていた。しかし今週になって状況に変化が出てきた。そこで、筆者は予想を変えた。結論として、来月のFOMC(9/21-22)までこのままレンジ相場で推移すると考えた。
その大きな根拠が、先週末に発表になったジジャクソンホール会議(中央銀行経済シンポジウム)の日程変更である。筆者もそうだが、市場関係者の多くは肩透かしを食ったのではないだろうか。いよいよジャクソンホールだ、と思っていたら、まさかの「日程変更」である。
既に公になっているが、当初の26-28日の3日間の対面会議が、27日(金)一日だけで、かつオンラインでの会になった。理由は「新型コロナの感染拡大からの影響回避」。20日に主催者のカンサスシシティ連銀から発表になった。では、FRBパウエル議長の講演はどうなった? と調べてみたら、27日の午前10時(米国東部時間、日本時間で27日午後11時)開始とわかった。FRBのカレンダーで既に予定されている。議長の講演は会議のメインイベントなので、はずすわけにはいかないだろう。なお、他の講演者のスケジュールは、前日26日の夜8時(米国東部時間)に発表される。
この発表を受けて、市場の空気も少し変わってきたように感じる。テーパリング開始は急がないのではないか、という変化である。一時は、早ければジャクソンホールで今年中に開始、9月のFOMCで正式決定の示唆があるとの見方が高まっていた。しかし延期の要因や、現在の景気動向、インフレ見通しなどから、FRBは急がない、いや、急げないという見方に傾き始めたと読んだ。
その理由として新型コロナ、デルタ株の感染拡大は大きい。その象徴が「10月までの渡航を控えるよう要請する」と、昨日24日に発表したハワイ州である。ワクチン接種により日常生活の正常化が進んでいたところに規制が発令され、米国経済の停滞、後退が一気に高まってきた。これまで発表された経済指標を見ても、雇用統計までは明るい希望が出ていたが、それ以降の指標は、ことごとく景気のトップアウトを懸念させるような数字だ。
急落したミシガン大学消費者態度指数に始まり、前月比(以下同じ)マイナス1.1%の小売り売上高、マイナス7.0%の住宅着工と続き、おひざ元の地区連銀の製造業景況感も軒並み前月比悪化している。NY連銀は+41→+18.3(7月→8月、以下同じ)、フィラデルフィア連銀は+21.9→+19.4、リッチモンド連銀は+27→+9.0となっている。この後退傾向はFRBNYが毎週公表している「週次経済指数(weekly Economic Index)」でも明らかだ。4月24日の11.87%をピークに毎月低下し、最新数字は7.82%(8月21日)と低下を続けている。
FRBとしては物価は高止まり、インフレ高進への懸念は相変わらず残っているので、さらなる緩和は行わないとしても、緩和の手を緩めるには慎重にならざるを得ないのではなかろうか。最近もテーパリングの早期実施の考えを示していたダラス連銀のカプラン総裁(今年は投票権無し)も、この自説に対し調整する必要性を表明している。
いずれにしても27日のパウエル議長の講演は注目していかなければならない。講演はカンサスシティ連銀のYouTubeアカウントでLive中継される。
(アドレスはhttps://www.youtube.com/user/KansasCityFed [YouTube]。FRBのホームページから検索できるので、確認してください)
そこで、今後1週間の相場見通しは、ドル円はレンジの109.00~110.50円と予想。またユーロは、対ドルで先週より小幅ドル安の1.1680~1.1880、対円では先週と同じく128.00~130.00円と予想。英ポンドは先週と同じ1.3675~1.3875と予想する。
(2021/8/25, 小池正一郎)