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市場養生訓

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第818回

2020年06月16日

 コロナ前とコロナ後では世界は変わるとの議論が多い。いわゆるニューノーマル(新常態)だ。
 為替の世界ではどうだろう。ドルの基軸通貨としての地位が揺らぐなどの見方もあるが、ここでは安全通貨について考えてみたい。リスクオフの取引が増えると買われる安全通貨のラインナップが変わるかどうかだ。
 現在、安全通貨として市場に認知されているのは主にドル、円、スイスフランだ。局面によってはポンド、スウェーデンクローネ、香港ドルも安全通貨の役割を担ったこともあった。だが長続きしなかった。
 安全通貨の条件には次のような点が挙げられる。市場の流動性が十分あること、政治・経済の安定、法が整備されていること、市場の規制があまりないこと、などだ。
 そのほかに個別にみると、米国は世界一の経済、軍事そして政治力を保有する。ドルは基軸通貨である、資本市場は世界一の規模だ。円の市場も十分な流動性を持つ世界的な市場だ。経済力もあり、政治は安定している。法も整備され開かれている。
 スイスフランは政治的に中立で安定している。貿易黒字国である。金融業は世界に開かれ多様である。ただその特徴の一つだった匿名性や秘密性はマネーロンダリングに対する世界的な規制が進むにつれ、影が薄くなった。
 ではコロナ後の安全通貨の候補としてはどのような通貨があるのか。コロナ後というくらいだから、コロナ禍からの回復が早い、コロナと共存しつつ封じ込めがうまくいっているなどが通貨の安全や信用のベースになると考えられる。
 その点からするとまずは東アジア、オセアニア通貨が候補に挙がる。タイバーツ、ベトナムドン、台湾ドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドルなどだ。いずれの通貨も対ドルで3月中旬あたりから上昇基調をたどっている。ただこの中でベトナムドンと台湾ドルは市場の流動性の点から候補から外れる。タイバーツは軍事政権であり政治の安定性がキズになり、ニュージーランドドルは市場規模の点で十分でないが、両通貨共ポテンシャルを考えれば候補に残す価値はある。
 欧州ではオーストリア、デンマーク、ノルウェーなどがコロナ禍からの立ち上がりが早いが、オーストリアはユーロ圏、デンマーククローネはERM2のシステムの中でユーロと連動しているので候補にならない。ノルウェークローネは3月中旬から現在まで対ドルで20%近く上昇している。原油の輸出国で世界有数の規模の国家ファンドを持つ。政治的には比較的中立の立場を維持し安定している。隣国のスウェーデンクローネは10%近い上昇だが、集団免疫を目指し経済活動の規制もあまりない。だが感染者数、死者数も多く、その方針に内外で批判も出ている。今後の推移にもよるが今のところは候補にあがらない。
 ユーロも財政統合が進めばドルに次ぐ二番目の通貨としてあるいはドルと肩を並べる安全通貨の候補に十分なり得る。
 一方で既存の安全通貨の運命はどうだろう。ドルとスイスフランに陰りが見えてきたが、すぐにとって代わられる可能性は低い。スイスフランを見ても、ある程度長く安全通貨の役割を担った通貨はその条件に陰りが見えても市場はなかなかその役割をはく奪しないからだ。
 いずれにせよ、安全通貨は長い時間をかけて選別されていく。いわば通貨の戦いでもあるが、その過程がスタートしたのかもしれない。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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