そのキューバでは先週、二重為替制度を廃止しペソの大幅な切り下げを断行した。ペソの公式為替レートは米ドルと等価で実質のレートとは大幅に乖離しているが、これが来年1月から1ドル24ペソになる。実質レートに近づけた。そして外貨兌換ペソと言ってドルと等価の通貨を廃止する。これは外国人用の通貨であり、外国の輸入品を買うときにも利用する。
こうした制度は外国の影響を直接に受けないようにする仕組みで、新興諸国の中でも発展の初期段階では採用する国も珍しくはない。中国も採用していた。
今回のキューバの決定は米国の政権交代と無縁ではない。オバマ政権時代米国は断絶していたキューバとの関係を改善した。人やモノの交流も増えた。だがトランプ政権になって米国は方針を転換し、関係は冷え込んだ。一方でキューバ経済は外貨獲得の主要な手段の一つである医療従事者やサービスの外国への輸出が激減した。コロナの影響や受け入れ先の南米左翼政権の退潮などのためだ。
キューバは米国との関係改善を図り外貨資本の導入を促進する必要がある。投資や観光客を増やしたいのだ。そのためには導入を円滑にするための制度改革が不可欠になる。二重為替制度の廃止もその一環だ。特に現在のように米国の金融政策が超金融緩和状態にある時は好都合だ。
一般的に新興国にとって米国の量的金融緩和政策にはポジティブな点とネガティブな点がある。前者には債務残高が膨らむ中でコストと流動性で有利になることだ。後者には通貨高がある。ドル安が進むと輸出競争力が削がれる。国によってこれらのバランスは異なり、対策も違ってくる。キューバの場合、ペソは大幅に下落し、通貨高の懸念はしばらく生じない。
このように大きな影響を与える米国の金融政策を決めるFOMC(米公開市場委員会)が今日明日の二日間開かれる。
前回の議事録や、FEDのパウエル議長の議会での発言から会議の概要は想像できる。金融緩和策を強化する方向だ。内容としてはFEDの毎月の債券購入額の増額(米国債と住宅ローン担保証券)、短期債から長期債へのシフト、購入期限の延長が選択肢に上る。この中で購入額の増額は見送られそうだ。
ただコロナの影響を軽減するための財政支出が議会でなかなかまとまらないなかで、FEDは失業率の低下を目指して相当な覚悟で臨むことは確かだ。
世界同時革命を信じたゲバラも世界同時金融緩和政策を支持したことだろう。