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市場養生訓

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第860回

2021年05月11日

 イェレン、そこまで言うか。ルーズベルト大統領のニューディール政策以来と言われる大型の経済政策を打ち出すバイデン政権の経済政策の司令塔としてイェレン財務長官が張り切っているのは分かる。アドレナリンも相当出ているに違いない。先週イェレンは金利上昇の必要性に言及した。加熱する経済を抑制するためだ。
 FEDで長年キャリアを積み実績を残したとは言え、現在は財務長官で政府の一員だ。中央銀行の独立には人一倍敏感であるはずだ。抑えていたものが口から出てしまったのか、意図的だったのか、それはわからない。だが財務長官がそうした相場観を持っていることは市場に知れ渡った。
 政府から中央銀行への圧力は米国でも世界でも珍しくはない。最近の例ではトランプ大統領がFEDのパウエル議長に利下げを再三求めた。日本でも白川前日銀総裁時代には政府からの利下げ圧力がしばしば見られた。先進国では中央銀行の独立性が確立しているはずだが現実はこの有様だ。新興国では一層露骨になるケースが多い。典型はトルコだ。大統領は利下げに応じない中銀総裁を何人も首にした。
 為替でもこうした問題は起きるが金利ほどではない。米国ではドル(為替)は財務省、金利はFEDとの区別がある。為替政策については財務省、財務長官の管轄になっている。従って為替介入の権限は財務相にある。為替介入の実務はニューヨーク連銀が行う。介入の資金はニューヨーク連銀にある財務省の口座を通じて決済される。ただFED自身も比較的少額の介入資金を保有するのでその資金で介入することも付随的にある。
 日本の場合も基本的に米国と同じだ。財務省の指示の下で日銀が介入の実務を担当する。もちろん両者は緊密に情報を共有する。英国もほぼ同様だ。
 ユーロ圏の中央銀行のECBは違う。金融政策も為替政策も担う。介入はECBの資金で行う。ただユーロ圏各国の中央銀行も自己資金で市場介入することもある。
 中国は中国人民銀行が金融政策も為替政策も担当する。外貨準備の管理は人民銀行傘下の国家外貨管理局の担当だ。
 最近は先進国での為替市場介入はスイス中銀を除けばほとんど行われていない。2011年の東日本大震災での円売り協調介入が最後だろう。グローバル化や自由化の進展の中で為替レートは市場の需給に任せた価格形成を重んじてきた。
 だがこのところの世界経済の潮流を見ると財政拡大、新たな税制や規制など政府の介入が多くなっている。その点では為替市場介入が復活する土壌ができつつあるとも考えられる。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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